2026-08

短編ミステリー

『青い嘘』青く聞こえる声

人の声には、色がある。少なくとも、私にはそう見える。朝、駅前のコンビニで店員が「ありがとうございました」と言えば、薄い橙色が視界の端を横切る。電車の車内放送は、少しくすんだ銀色。子どもの笑い声は、黄色や桃色になることが多い。色が実際に空中へ...
短編ミステリー

『自分だけが知らない暗証番号』あとがき

最後まで『自分だけが知らない暗証番号』をお読みいただき、ありがとうございました。今回の物語で描きたかったのは、金庫の中身そのものではなく、**「自分の記憶はどこまで信用できるのか」**という小さな疑問です。自分で買ったはずなのに、覚えていな...
短編ミステリー

『自分だけが知らない暗証番号』金庫の中身

圭介は、八桁の数字が書かれた紙を机に置いた。58310426おそらく、これが暗証番号だ。ここまで来れば、金庫を開けることはできる。だが、まだ開けない。三日前の自分が仕掛けたもの。それは金庫そのものではなかった。暗証番号でもない。「自分は記憶...
短編ミステリー

『自分だけが知らない暗証番号』開けてはいけない理由

圭介は、ノートに書いた四桁の数字を見つめた。4721暗証番号かもしれない。だが、まだ金庫には入力しない。三日前の自分が残した警告を無視するつもりはなかった。調べるべきなのは、この数字が何を意味しているのか。圭介はまず、自分に関係する数字を洗...
短編ミステリー

『自分だけが知らない暗証番号』残された数字

その日の夜。仕事から帰った圭介が最初に確認したのは、金庫だった。朝と同じ場所にある。当然だった。誰も部屋には入っていない。それでも圭介は、玄関から部屋へ入った瞬間、机の横を見ずにはいられなかった。黒い金庫。テンキー。取っ手。そして朝見つけた...
短編ミステリー

『自分だけが知らない暗証番号』知らない番号

最初に気づいたのは、金庫だった。朝七時十二分。目覚ましを止めた三浦圭介は、ベッドから起き上がり、何気なく部屋を見渡した。いつもと変わらない朝だった。カーテンの隙間から差し込む光。昨夜、途中まで読んで閉じた本。テーブルに置いたままのマグカップ...
短編ミステリー

『鏡の中の間違い』あとがき

最後まで『鏡の中の間違い』をお読みいただき、ありがとうございました。今回の物語で描きたかったのは、怪異そのものではなく、「一度そうだと思い込むと、すべてがそう見えてしまう怖さ」です。時計の位置。カーテンの隙間。机の上の本。壁に浮かぶ黒い点。...
短編ミステリー

『鏡の中の間違い』正しかった鏡

修一は、動けなかった。机。時計。カーテン。窓。これまで「鏡の中でずれている」と思っていたものを、一つずつ見る。そして、床に伏せた姿見へ目を向けた。修一は鏡を起こした。元の場所には戻さず、両手で支えて部屋へ向ける。机。時計。カーテン。本。いつ...
短編ミステリー

『鏡の中の間違い』間違っていたもの

コツ。修一は姿見を見つめた。布は掛かったままだ。数秒待つ。何も聞こえない。「……鏡の裏?」自分で口にして、その言葉のおかしさに気づいた。姿見は壁に固定してある。裏側に人が入れるような隙間などない。それでも修一は近づいた。布をつかむ。一気に引...
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『鏡の中の間違い』鏡の中の規則

黒い点は、まだそこにあった。ベッド脇の白い壁。現実には何もない場所に、鏡の中でだけ小さな黒い点が浮かんでいる。修一は姿見へ近づいた。汚れか。傷か。指先で鏡の表面をなぞる。何もない。ティッシュで拭いても消えない。試しに一歩横へ動いた。黒い点が...