『鏡の中の間違い』あとがき

『鏡の中の間違い』あとがきを示すタイトル画像。 短編ミステリー
『鏡の中の間違い』― あとがき

最後まで『鏡の中の間違い』をお読みいただき、ありがとうございました。

今回の物語で描きたかったのは、怪異そのものではなく、

「一度そうだと思い込むと、すべてがそう見えてしまう怖さ」です。

時計の位置。

カーテンの隙間。

机の上の本。

壁に浮かぶ黒い点。

一つひとつは小さな違和感でも、それらが続けば「何かが起きている」と考えたくなります。

そして修一もまた、

「鏡の向こうに、もう一つの部屋があるのではないか」

という考えにたどり着きました。

そこからは、壁の継ぎ目も、古い設備スペースも、動いた本も、意味深なノートも、すべてが一つの怪異につながっているように見えてしまいます。

けれど実際には、それぞれに別の理由がありました。

最も大きな「間違い」は、鏡の中にあったわけではありません。

最初に立てた仮説に合わせて、目の前の出来事を解釈してしまったこと。

それこそが、この物語のタイトルにある「間違い」です。

推理小説では、不可解な現象そのものだけでなく、

「主人公が何を疑ったのか」

「読者に何を疑わせたのか」

そして、

「そもそも疑うべきものは、それで正しかったのか」

という部分にも面白さがあると思っています。

鏡の向こうに誰かがいる。

そう思いながら読んでいただけたのなら、この物語の仕掛けは半分成功です。

そして最後に、

「最初から鏡の向こうには何もなかったのか」

と思っていただけたなら、残りの半分も成功だったのかもしれません。

日常の中で、いつも見ている景色がほんの少しだけ違っていたら。

あなたは、自分の記憶と目の前の光景――

どちらを信じますか。

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

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