2026-08

短編ミステリー

『甘い眩暈』消えた20分

最初におかしいと思ったのは、チョコレートを食べた夜だった。2026年8月13日、木曜日。午後九時を少し回ったころ。水城圭介は仕事を終え、一人暮らしのマンションに帰ってきた。ネクタイを緩め、冷蔵庫からペットボトルの水を取り出す。夕食を作る気に...
短編ミステリー

『いつも先に借りている人』あとがき

最後まで『いつも先に借りている人』を読んでいただき、ありがとうございました。この物語は、「自分が借りる本の貸出カードに、なぜか毎回同じ人の名前がある」という小さな違和感から始まりました。今では図書館の貸し出しもバーコードやコンピューターで管...
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『いつも先に借りている人』最後の貸出カード

「先生」僕は言った。「まだ、僕に隠してることがありますよね」先生は答えなかった。旧校舎三階の資料室。夕方の光が、薄暗い部屋の中へ斜めに差し込んでいる。机の上には、二〇一二年度の図書委員会資料。黒いノート。そして十四年近く前の水城澪が写った写...
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『いつも先に借りている人』旧校舎三階資料室

その日の夜、僕はずっと暗号の続きを考えていた。キュウコウシャ サン カ旧校舎、三、カ。「カ」は何だ。階。会議室。科学室。管理室。いくら考えても決め手がない。ただ一つ分かっているのは、司書の先生が「旧校舎には行かないで」と言ったことだった。危...
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『いつも先に借りている人』水城澪を探す

カタン。図書館の奥から、本が床に落ちる音がした。僕は顔を上げた。「……誰かいるんですか?」返事はない。時計を見ると、午後五時十二分。七月九日、木曜日。閉館までまだ時間はある。ほかの生徒がいてもおかしくはない。それなのに、急に図書館全体が静か...
短編ミステリー

『いつも先に借りている人』カードの名前

六月十六日、火曜日。昼休みになると、僕はいつものように図書館へ向かった。校舎の西端にある図書館は、昼休みでもそれほど混まない。友達と話すのが嫌いなわけではない。ただ、四十分しかない昼休みを教室の騒がしさの中で過ごすより、本棚の間を歩いている...
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『青い嘘』あとがき

『青い嘘』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。今回の物語では、**「人の声に色を感じる共感覚」**をミステリーの中心に置きました。主人公は長いあいだ、青い声=嘘だと信じています。実際、これまで青く感じた言葉が後になって嘘だった...
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『青い嘘』嘘には色がない

翌朝。私は開館前の事務室で、高瀬さんを待っていた。机の上には三つのものを並べてある。消えたあと見つかった『わたしたちの町 二十年の記録』。高瀬さんが書いたという電話メモ。そして、十八年前の職員記録から控えた吉岡恵美さんの連絡先。午前八時四十...
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『青い嘘』青の正体

翌日。私は開館前から、昨日印刷した新聞記事を机の上に広げていた。二十年前のタイムカプセル。五歳の藤崎真帆。そして、その隣に立つ母親らしい女性。写真の中の二人は、白い封筒を手にしていた。七日後。タイムカプセルは開封される。もし水野さんが本当に...
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『青い嘘』嘘ではない青

翌朝。私はいつもより三十分早く図書館へ着いた。昨夜から、ずっと同じことを考えていた。青は、本当に嘘の色なのか。二十年以上、疑ったことのなかった感覚だった。けれど水野さんは、問題の本に触れていない。少なくとも、防犯カメラを見る限りでは。それな...