『青い嘘』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回の物語では、**「人の声に色を感じる共感覚」**をミステリーの中心に置きました。
主人公は長いあいだ、
青い声=嘘
だと信じています。
実際、これまで青く感じた言葉が後になって嘘だったと分かる経験を何度もしてきたため、その考えを疑う理由がありませんでした。
けれど、物語の中で水野の声は青く見えるのに、彼女の言葉は事実と一致します。
そこで初めて主人公は、自分が「感じているもの」と「そこにつけた意味」は同じではないのではないか、と疑い始めます。
共感覚そのものが間違っていたわけではありません。
主人公は確かに声の変化を色として感じていました。
ただし、その青は嘘そのものを表していたのではなく、緊張や動揺、言いたくないことを意識したときに生じる声の変化だった。
そして主人公は、これまでの経験の中から、
「青く見えて、実際に嘘だった出来事」
を強く記憶していたために、いつの間にか自分だけの法則を作ってしまっていました。
今回描きたかったものの一つが、この思い込みです。
人は、目で見たものや耳で聞いたものだけで判断しているようでいて、実際にはそこへ自分なりの意味を加えています。
「この人は目をそらしたから嘘をついている」
「返事が遅かったから何か隠している」
「いつもと声が違うから怪しい」
そんな小さな違和感が当たることもあります。
しかし、違和感と真実は同じものではありません。
水野が青く聞こえたのも、彼女が犯人だったからではありません。
過去に触れられたくなかったからでした。
反対に、高瀬の声が青くなかったからといって、彼がすべて本当のことを話していたわけでもありません。
この物語のタイトルを『青い嘘』としたのも、そのためです。
最初は、
「嘘には青い色がある」
という意味に見える。
しかし最後まで読むと、
青かったのは嘘そのものではなく、主人公が嘘だと思い込んでいたものだった
と意味が変わります。
もう一つ、この作品では殺人事件を扱っていません。
消えた一冊の本。
なくなった参加者名簿。
二十年前のタイムカプセル。
それぞれが小さな出来事ですが、人が何かを隠す理由は、必ずしも悪意とは限りません。
恥ずかしさ。
後悔。
家族への思い。
思い出したくない過去。
誰かを守りたいという気持ち。
そうした感情も、人を嘘や秘密へ向かわせることがあります。
そして、最後に主人公がたどり着いた答えは、とても単純なものでした。
人の声には色がある。けれど、嘘そのものに色はない。
誰かを理解するためには、目に見えるものだけでも、自分の直感だけでも足りない。
だからこそ、話を聞き、事実を確かめ、自分の思い込みを疑う。
そんなことを、この小さな謎を通して描けていたら嬉しく思います。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


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